久しぶりに営業の話。
営業も数年もすれば仲の良いお客さんが数件できてきます。気兼ねなく何でも話せるお客さんって感じですかね。
今回は、そんな仲の良いお客さんとの話。
営業マンにとって仲の良いお客さんというのは、実はちょっと困った事にもなるんですね。
今から15年以上前、まだ私が若手の営業マンだった頃の話。
当時、私は企業内教育ビデオの営業を行っていました。
営業先は企業の人事部や教育研修部、場合によっては営業本部。
当時の私は、特定の業界に特化することで自分の商品価値を高めてお客さんに認めてもらう、という作戦を取っていました。
選んだ業界は製薬業界。
大手の国内メーカーや外資系の会社を徹底的にまわりました。
初めはアポイントも難しかったお客さんも、業界の専門用語を使ったアポイントトークを使えば容易に合う事ができるようになりました。
実際にお会いしてお話することは、業界情報ばかり。
MRの資格化、外資の合併、参入、薬価改定、新薬の噂、等々。
本来の営業とは全く関係のない話で盛り上がります。
おかげで製薬業界の最新情報にはかなり詳しくなりました。
担当者の方にもかわいがられるようになり、時間があればいつでも寄るように言われます。
私は、お客さんから頼りにされていると思い込んで、得意満面。
しかし、本業である教育用ビデオの営業はさっぱりです。
社内の営業会議では、製薬業界についてのレクチャーはできますが、営業状況についてはお寒い限り。
たまに、お客さんがどうしても必要な商品を注文してくれるくらいで、結局製薬会社のお客さんとはあまり商売にならず。
でも、自分は仕事をしているつもりだったんです。
自分が訪問するとお客さんは喜んでくれる、ニコニコしながら業界の話をしてくれる、場合によっては自社の問題についても語ってくれる。
それは、営業マンとして信頼されている証拠だ、思い込んでいたのです。
私の間違いは、何だったのでしょうか?
答えは、営業担当が変更になったときに出ました。
営業部内の担当変更に伴い、私は製薬業界を離れ、後任は後輩の女性営業マンに。
しばらくすると、後任の女性営業マンは、以前私が担当していた製薬のお客様から次々と注文を取ってきます。
皆、とても仲の良かったお客さんばかりです。
彼女に「鈴木さん、お客さんにうちの商品案内してないですよね」と言われてしまいます。
更に「お客さん言ってましたよ、鈴木さんからはそんな商品の案内はされなかったなぁ、って」と言われる始末。
そうなんです。私は営業マン本来の仕事である自社商品について、しっかりとヒアリング、プレゼンテーションをしていなかったんですね。
なぜ、そうしなかったのでしょうか?
恐らく私は、仲の良いお客さんに商品を案内するのが怖かったんだと思うんです。
自社の商品を案内して、断られたり、うっとうしがられたりすることが怖かった。
せっかく仲良くなったのに、商品を案内したせいで関係が崩れてしまうのが嫌だった。
そんな事が理由ではないでしょうか?
若手の営業マンが陥りやすい勘違いですよね。
営業マンの仕事は、[自社の商品・企画(場合によっては外部の力も活用しつつ)でお客さんの問題を解決する]ことです。
お客さんだって、本当は営業マンの提案を待っていたはず。それなのに私は業界話ばかりで営業していなかった、なんとも恥ずかしい話ですね。
情けない話ですが、後輩にそのことを教えてもらったのです。
仲の良いお客さんとは、意識して仕事の話をするようにしないと、本来の目的が達成できません。要注意です。
ちなみに、その後、後輩の女性営業マンは製薬業界の情報もしっかりと収集し、営業成績も上げてすっかりトップセールになっていきました。
そして、今では我が家で3人の子育てをしています。
うーん、やっぱり昔から二人の関係は変わっていないような・・・。
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