「質の経済」の担い手、中小企業においての最大の悩みとは、お金と人にあるわけで。
「感情や感性」を刺激するマーケットを創造するときに、結構やっかいなのがいわゆる「既成概念」ってやつで。
「既成概念」とは、いままでの経験や知識によって、自らの考えを縛ってしまうこと。自らだけを縛るのは勝手な話ですが、それなりに力がある人が、周囲に対して縛ってしまうと、これは大きな問題。
会社の上司が、既成概念に縛られてメンバーの新しいアイデアや目先の違う意見に見向きもしなければ、「感情や感性」を刺激する仕事を造り出すことは難しくないですか?
特にこれからの時代は、今までとは違うマーケットのロジックが必要になるのかもしれません。
マーケットのロジックが変われば、マネジメントのロジックが変わる、経営の仕組みも変わって行くかもしれません。
それらを変えることは、とても勇気のいることなのです。
私もかつては、R社において「イケイケ的マネジメント」を経験し、高度成長の経済環境のなかで売上を上げることを至上命令とされながら仕事をしてきました。
当然のように、当時の考え方や姿勢が体にも思考にも染み付いています。
しかし、それが今も通用するのか、は常に検証しなければなりません。
正しいか、間違っているかではなく「通用するのか」なのです。
当時の考え方や手法が今でも通用するものもあるでしょう。しかし、手直ししたり見直す必要がある考え方もあるはずです。
経済環境が変化し社会情勢も変化しています。当然働く人も消費者の感性も変化しているのです。それも日々。
だからこそ、これからの時代は、経営者やマネジメント層にとっては常に自問自答になるでしょう。答えはありませんから。
私の最近の思考はそのようになっていて、自身の「既成概念」と戦っています。
と、ここまで読まれた、若いビジネスマンのあなた!
「やっぱりな、俺の考え方が理解できないのは、上司の既成概念のせいだ!俺は悪くない!」
なんて、思っていただくのは結構な話なのですが、では、お尋ねします。
「あなたの考えが正しいと主張するだけの努力はしましたか?」と。
新しい時代で、新しい考え方が必要だとは思いますが、若い人の意見や考え方がすべて正しいわけでもなければ、ベテランの人のアイデアが使えないわけではないのです。
既成概念をぶち壊すのであれば、壊すだけの「力」が必要でしょう?
前回に触れました「ウオークマン」。それまでは、音楽は家で楽しむもの、もしくはライブなどの会場で楽しむもの、移動中に楽しむとすれば車の中、という既成概念があり、音響メーカー各社はそれらの場所に応じた商品開発にしのぎを削っていました。
そんな中で、歩きながら音楽を楽しむという全く新しい概念を打ち出したときの周囲からの抵抗とはいかばかりでしょう。
以前、開発された方[黒木靖夫氏 ソニー株式会社元取締役]のドキュメントを拝見したことがあったので思い出しましたが、大変な努力とご苦労をされたようです。
そう、既成概念を壊して行くためには、周囲を納得させるだけのパワーを使って「努力」をしなければならないのです。
口だけで偉そうなことを言って、上司に対して理解してもらえるような働きかけも行わず、周囲に自分のことを理解してもらえないことを嘆くのは、ただの「愚痴」です。
これからの時代を創っていくのは、「価値創造の努力」に惜しみなく力を注ぐことができる人だと思います。
「愚痴」を言えるパワーがあるのであれば、もっと周囲に自分の考えを理解してもらえる努力をしましょう。
その努力が「既成概念」を壊していく力となるでしょう。結果として自分自身が活躍しやすい環境を作ります。
「既成概念」を越えて「感情や感性」を刺激するマーケットを造り出せれば、社会にとっても大きな財産になるはずです。
人が変わり、会社が変わり、社会が変わる。そのような変化を生み出したいですね。
次回、「質の経営」のについてもうちょっと具体的に触れてみたいと思います。