ある町で、旅人が煉瓦を積んでいる職人を見た。
旅人が尋ねる「何をしているのですか？」
職人が答える「見ればわかるだろ、煉瓦を積んでんだよ」
しばらく行くと同じように煉瓦を積んでいる別の職人を見た。
旅人が尋ねる「何をしているのですか？」
職人が答える「煉瓦を積んで壁を作っているんだ」
またしばらく行くと別の職人が煉瓦を積んでいる。
旅人が尋ねる「何をしているのですか？」
職人が答える「地震でも壊れず、住む人を守れる壁を作ってるんだ」
この３人の職人の話は、目的を明確に持って仕事をしているか否かという例えに良く使われる。
最初の職人は、作業（手段）が目的化している。仕事の本来の目的を理解していない。
二番目の職人は、作業の結果としての目的は理解しているが、本質的な仕事の目的は理解していない。
三番目の職人は、本質的な仕事の目的を理解している優れた職人である。
例え話なので、細かい事を言うのもなんだが、この話には無理がある。
どこの誰だかわからん奴に仕事中にいきなり話しかけられてまともに答える人間がいるか？何をやってるかはみればわかるだろうに。
それに、三人目の職人のように流暢に話をする職人ってどうだろう。果たして本当に優秀な職人なのか？調子が良いだけじゃないのか？
そこで、自分なりにこの物語の続きを作ってみた。
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三人それぞれが作った壁は完成し、家も完成した。
二番目の職人Bさんの仕事は早く、三人の中では一番に完成した。
一番目の職人Aさんと三番目の職人Cさんはほぼ同時に完成した。
完成してからしばらくして、町に大きな嵐がやってきた。
突然の嵐に町の人は大慌て。こんなに大きな嵐は経験したことがない。
窓を閉め、ドアに鍵をかけ、嵐が収まるのを待った。
いよいよ嵐が強くなった時、ある家が土台ごと飛ばされた！
Bさんが壁を作った家だった。
中に住む人はCさんが壁を作った家に避難した。
しばらくすると今度はある家の壁が崩れた！
Cさんが壁を作った家だった。
中で避難していた人たちは急いでAさんが壁を作った家に避難した。
命からがら、やっとの思いで家の中に入った人達は驚いた。
外の嵐がうそのように静かだったのだ。
ほどなく嵐は過ぎ去った。
多くの家が崩れ、多くの家が飛ばされた。
そんな中でAさんが壁を作った家は全く無傷だった。
調べて分かった事だが、Bさんの作った壁の家は、煉瓦を積む時間を短縮するために軽い煉瓦を使い、煉瓦の間に詰めるセメントを速乾性のものにしていた。
だから家自体が軽く、嵐で吹き飛んだ。
Cさんが壁を作った家は、確かに地震に耐えられるような設計を建築士に頼んだ。積んだ煉瓦も耐震性のあるものを選んだ。しかし、Cさんは煉瓦を積む技術が未熟だった。
だから、煉瓦どうしの接着面が甘く、そこから水が入り、壁の強度が落ち、強い風によって崩れてしまったのだ。
Aさんは町一番の煉瓦職人。彼が作った壁で壊れた家はない。突然の嵐でも彼が作った壁は一つも崩れていない。
Aさんは愛想がない、人付き合いも嫌いで変わり者と言われている。しかし仕事は確実で丁寧。
だから、旅人に声をかけられて「何をしているのですか？」と聞かれたときにも面倒くさそうに対応をした。
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もしも、煉瓦職人の話がこんな内容に展開していたとしたら、果たして冒頭の評価はどうなるだろう？
つまりこういうことだ。
理想を語るのは簡単。理念や仕事の目的や人生の目標など。
しかし、裏付けのない理想は単なる幻だ。
手段をバカにしてはいけない。
煉瓦職人は、煉瓦を積むことのプロフェショナルにならなければいけない。
プロは妥協しない、材料も作業工程も。他人にうそはつかないし、自分にもうそをつかない。
だから信用される。信用されるから仕事が増える。
Bさんは、たぶん煉瓦積みのスキルはあったのだろう。しかし、理念がなかった。壁ができたらそれでよいのである。壁とは本来どうあるべきか？の考えが浅かったのではないだろうか。
Cさんは、理念もあった、目的もしっかりとわかっていた。しかし、基本的なスキルがなかった。これでは仕事にならない。町一番のお調子者煉瓦職人ということになりそうである。
Aさんは、スキルがある、目的も分かっているし、自分なりの理念もある。ただ寡黙なのである。寡黙な人は黙して語らず、自分の仕事を全うする。プロフェッショナルである。
しっかりした技術の裏付けなしに理念を語るのは滑稽でしかない。
さて現実社会、周りを見渡すといかがだろうか？
理念は立派だがやってることは稚拙な企業や目的の達成の為には手段を択ばない企業が多く見受けられる。
理念や目的もしっかりしたスキルの裏付けがなくては実現できないし、持続できない。
「手段」をしっかりと身に付ける時期があっても良い。
まさに、手段（を身に付ける事）を目的にすることも大切なんだと思うがいかがか？