先週日曜日夜、娘を迎えに車で品川に行った。
帰路二人だけ、車内の時間。
ーこんな場面、今まであったか?ー
話しが盛り上がらない。
「今日はどうだった?」「友達はどうだった?」などと言葉をかけてみる。
「うん、楽しかった」「楽しそうだったよ」などと心ない返事のみ。
ーまぁ高校生の女子なんてこんなもんだろうー
会話を諦めて運転してると、となりで爆睡。
ー朝から練習してるし、疲れるわなー
自分も高校生の頃はそうだった。
部活や友達のことで頭がいっぱい、家族のことなど何も考えていなかった。
当然親との会話も滞りがち。
特に父親は普段口数の少ない人なので会話がなかった。
母親はというと、心配性で常に何かを心配していた。
自分の顔をみると「大丈夫なの?」と聞いてくる。
「何が?」
「学校とか」
「学校の何が?」
「ちゃんとやってるの?」
「たぶん」
「たぶんってなによ?」
「大丈夫だよ、退学にも停学にもなってないし」
「まぁそうなんだろうけど」
などとどうでも良い会話。(ちなみに今だにこれは続いている)
そんな父親と母親が会話をすると、とんだトバッチリを受けることがあった。
普段は口数の少ない父親も酒が入ると饒舌になる。
外で飲んできた勢いで調子の良い話をしだすと母親の決まり文句がやってくる。
「大丈夫なの?そんな調子の良い話」
すると父親は最初のうちは「大丈夫だよ!」なんてご機嫌で返しているが母親の心配性が続くと・・・。
「うるせえ!」と怒り出す。
そうなると子供達はさっさと自室に戻る。
これが元で二人はしばらく口をきかない、冷戦状態。
普段口数の少ない父親はさらに口数がなくなり不機嫌になる。
母親も口数が少なくなり、静かな家のなか。
「またかよ、やれやれ」なす術もない我々兄弟。
そんな二人が本日、「金婚式」の祝膳。
よくもまぁ50年も夫婦を続けてこられたものだ。
父親が言うのは「そこそこ仲が良かったから長く続いた」
仲が良すぎると長く続かないらしい。
子どもの頃「この二人はいつ別れるのだろう」と感じていたのだからあながち嘘とも言えない。
結婚して間もなく会社を始めた父親。
二人の子どもを育てつつ、父親を支えてきた母親。
二人が見てきた景色というものはどのようなものだったのだろうか。
宴の締め、挨拶をする父母。
噛みしめるように語る二人の言葉には50年の重みがあった。
我々息子たちが用意した祝膳を心から喜んでくれていた父母。
これからも元気で。