先日、経営者勉強会の席で。
「俺の娘、スタバ(スターバックス)でバイトし始めたんだよな」
とIさん。
娘さんは薬科系大学を出て社会人になり転職準備中、本格的な活動の前にバイトを始めたそうだ。
「そりゃすごいね、Iさん!あそこで働くことはなかなか難しいらしいよ」
「そうなの?なんか毎日楽しそうだよ」
その後は周囲の経営者を巻き込み”スタバ”についての討論会。
自分もたまに利用するが、かのお店は常に気分が良い対応をしてくれる。
店員さんの「顔」が見える。
他のカフェ店ではあまりないかな。
ある店舗に限ったことではなく、概ねどの店舗でもそのような感じなのだ。
それはなぜか?
ある筋から聞いたところによるとスタッフ教育にヒントがあるらしい。
新メンバーが入店するとまず教えられることは「自ら考えて判断すること」
通常、多店舗展開している同様の店では「マニュアル」が存在している。
コーヒーの淹れ方から顧客対応を方法まで。
トラブル対応についてもマニュアルで規定されている。
ところがスタバには細かなマニュアルがないらしい。
あるのは「お客さんの満足を得ること」という全店共通の目的のみ。
いや、もちろんマニュアルが全くないわけではなかろうが、細かな対応はスタッフに任されている。
例えばこんなことも。
受け取った飲み物をテーブルに置いた、それがコートに引っかかってこぼれてしまった。
すぐにスタッフは飛んでくる「大丈夫ですか?火傷はありませんか?お召し物は?」
と聞いてくる、そして「新しいものをお持ちしますね!しばらくお待ちください」
これは実際に自分が経験したことである。
飲み物をこぼしたのは自分であり、お店の床を汚したことを責められても新しいものを「無料」でいただくような立場にない。
それでも新しい飲み物を無償で提供いただいたわけだ。
この対応はマニュアル化されてないらしい、スタッフそれぞれの対応に任されている。
店長に伺うを立てることもなく、その場で対応できるのである。
バイトでも正社員でも同じだけの権限がある。
すごい度量の会社である。
働いている人も「楽しい」し「やりがい」あるよね。成長もする。
よく「何のために〜するのか?」という問がある。
何のために「勉強」するのか?
受験で成功して良い学校に入るため。
何のために「仕事」をするのか?
お金を稼いで生活を安定させるため。
「目的」のために「手段」がある。
勉強や仕事をするのは「手段」であって目的ではない。
「手段」をしている時間は長く、そのことで思考したり悩んだりの時間も長い。
「勉強」や「仕事」をしている時間は「辛い」し「早く解放されたい」と思う人が大半であろう。
(自分にとって「勉強」することが楽しかったのは小学校で卒業してしまったのだが・・・)
この「手段」が自分にとってかけがえのない「楽しい」時間であったらどうだろう。
「勉強」することがたまらなく「楽しい」という人はおそらく研究者や教授になっているのであろう。
自分は幸いに「仕事」をしている時間はかけがえのない「楽しい」時間である。
もちろん最初からそうではなかったが、今では「楽しい」時間である。
さて、今の「仕事」をする時間が「楽しい」と思っている人。
この人は前述のスタバスタッフさんと同じ感性で仕事をしているってこと。
もしも「仕事」は所詮手段であると思っている人。
他のチェーン店のスタッフさんと同じかもしれない(いやいや、もちろんそうでない方もいますよ)
さらに言えば。
仕事が楽しくやりがいが持てる人というのは、今の職場の経営者と「信頼」ができている。
概ね間違いない。
善良な経営者というのは、メンバーがやりがいを持って仕事に取り組んでいる姿を見るのはかなり「嬉しい」
細かな指示をしなくても経営者と同じ感性で仕事をしてくれているメンバーは愛おしい。
「信頼」は積み重なる。
経営と現場の信頼関係は顧客に伝播する。
現場と顧客との信頼が重なれば売上は自ずと増えていく。
スタバが好調なのは現場スタッフと地域顧客との信頼関係づくりがかなり影響しているのではなかろうか?
高度成長期の常套句のように「マニュアル化してサービスを平準化する」ことで信頼が得られる時代は終わった。
本来の目的である「お客さんの満足」のためにあえてマニュアル化しない現場の「思考と判断」に委ねるという経営判断。
これこそが次世代型なのだろう。