最近営業の役割を考える機会があり、改めて「営業」の役割について考えてみた。
営業という言葉の解釈は余りにも広く、それについて語るのは難しい。
ビジネス界で行われている様々な状態が営業であるわけで、お店が開いている状態も「営業中」だ。
その中で「売上目標」を持つ営業というのがいわゆる「営業マン」の仕事である。
ここで営業マンと売上目標の関係について改めて考えてみたい。
そもそも学生時代に「私は営業マンになりたい」という人はどれほどいるのだろうか?
将来の起業のためにとかキャリアアップを目指すごく少数の学生以外自ら望んで営業マンに立候補する人は少ないであろう。
その元凶とも言えるものが「売上目標」である。
社会に出た事のない学生諸氏や世間の印象はこうだ。
営業マンには必ず「売上目標」が設定されており、売上が足りないメンバーがマネジャーや社長から詰められる、辛い外回りの日々。
そんな仕事をするために良い学校通ったわけではない!
こんな昔のドラマの名残のような世界をイメージしているだろう。
そもそも「売上目標」はなぜ設定されるのであろうか?
「モノ」が少ない時代から高度成長期の名残のようなものなのだ。
昭和初期から戦後の高度成長期に至るまで消費文化が花開いた。
様々な商品が世の中にデビューし、世間が知らないものが世間に溢れる。
製造メーカーは消費者に説明をして販売をする、説明が上手な人は売れる。
製造メーカーの営業部隊は組織された。
営業部隊は売る事を使命とされるので売るための手法を考える。
最初は売れている人の真似をするのみだったが、真似しても売れない人が出てくる。
そこで営業活動の中身を分解、分析することになる。
営業マンの1社あたり受注単価が10万円という結果が出たとしよう。
営業マンが1社受注するまでの経緯をみる、訪問件数5件に1件の割合で受注しているとする。
5件の訪問をする為のアポイントを獲得するには20件の電話をしなければいけない。
従って、営業マンが1件の受注をするには20件の電話をする必要があると計算できる。
新人営業マン君の売上目標を月に100万円とすると、少なくても月に200件の電話をかけることになる。
営業マネジャーやリーダーはこの数字に従って彼を指導することになる。
「今日、何件電話した?」「10件です」
「10件じゃ足りないだろ?今週中に200件電話しなきゃ今月中に100万売れないだろう?」「・・はい」
「明日は50件やれよ!」「はい、わかりました」
という会話がそこここの営業部署で行われるのはこの為である。
「売上目標」というものは営業マンが稼ぐべき数字であると同時に行動目標も設定するものであった。
中堅ベテランはその10倍、20倍の数字をやらなければならないが既存のお客さんや紹介してもらうお客さんで売上は稼げる。
足りない数字は新規訪問で稼げば良い、そんな数式が通用する時代であった。
しかし、この形態の営業が通用したのは高度成長期の昭和までである。
平成の終わりの今の世の中ではほとんど通用しない仕組みである。
理由をいくつかあげる。
1 「モノが少ない時代」「高度成長期で使い捨て当たり前時代」のものである。
2 商品の営業マンからの手離れが良くなくてはいけない、企画商品は向かない。
3 営業マンのメンタリティーが強くないと辞めてしまう。
「狩猟型ビジネス」時代であればこの営業スタイルは通用したのである。
現在は、低成長時代で消費は拡大していない、使い捨て時代でもない。
人材は貴重な財産である、昔のように「できない奴は辞めていい」なんて時代ではない。
情報はネットで集められるので営業マンの説明よりも客観的で的確な情報が手に入る。
欲しいものもネットで買える、今日頼めば明日には手元にある、法人サービスも充実だ。
営業マンの役割として商品説明が必要なくなってきた。
モノ余り時代、使い捨てから再利用、サスティナビリティ。
物売りから課題解決、提案型
恒常的人材不足による人材活用。
「農耕型ビジネス」への転換。
ということで「売上目標設定」によって営業マンの行動を設定することができなくなり、期待通りの売上を上げることも困難になってきた。
ビジネスの仕組みが多様化している、プラットフォーム型、サブスクリプション・・・。
コミュニケーションの仕方も多様化している。
営業マンが個人で活動して売り上げることができる金額には限界がある。
個人からチームへ、営業活動の単位が変わっている。
農耕型ビジネスは「育てる」「開拓する」「産み出す」である。
売上目標を達成する為にムリをして顧客の信頼を失うようなことは今の時代では通用しないのである。
いまだに厳しい売上目標設定をして営業マンの尻を叩いているような企業はこれからの社会では通用しなくなるだろう。