台風8号が上陸する中、何とか無事に博多に到着した。
自分が乗る前の便までは欠航、2時間近く遅れての到着だった。
最近、出張する度に台風がやってくる、先月の沖縄もそうだ。
全く何の恨みがあるやら、すっかり嵐を呼ぶ男扱いだ!
今回の出張の目的は博多でのオフィス探し。
結果的には良い物件と出会うことができて目的達成!
よかった、そこは台風に蹴散らされなかったね。
そして、もう一つの目的。
25年前の自分に出会うこと。
会社を辞めて、仕事がなかった時に先輩から頂いたつなぎの仕事。
「福岡ドーム 暖手プロジェクト」
ダイエーが立ち上げた福岡ドーム、球場の周辺にモニュメントを設置したいというオーナーの意向で始まったプロジェクト。
当時お世話になっていた新美さん。
彼が提案した暖手プロジェクトは博多にゆかりのある有名人の「握手している手型」設置して会場来場者と握手ができるモニュメントにするというもの。
ゆかりの有名人や海外のアーティストの手型を取りに行くことから始まる。
これが実は大変な作業。
バケツとある液体を持って対象者の元へ、バケツの中で液体をゼリー状にして対象者の手を入れてもらう(握手しているイメージで)
ほどほどに固まったタイミングでゆっくり手を抜いてもらい、そこに石膏を流し込む。
対象者にはその場で直筆のサインをもらう。
この一連の作業を2、3名のクルーで行う。
このチームはいくつかあり、それぞれが有名人やアーティストの手型をもらう。
自分は武田鉄矢さんや松本零士さんや三波春夫さんを担当した。
最終的にできた石膏の手型を真鍮?とかにしてドームに設置したのだろうけど。
我々末端はそこまでの作業にはタッチしない。
とにかく手形をもらうことに注力、それを何回か手伝った。
ギャラがどれくらい出たかは覚えていない、何人取ったかも覚えていない。
ただ、この頃の自分がどうだったのか?は覚えている。
「何をしたら良いのか?」「何をしたいのか?」がさっぱりわからず、ただただ日々を過ごしていたことを思い出す。
辞めた会社からわずかながらの仕事をもらい、でもそれだけでは食べていけず。
ビジネスのアイデアをダイヤリーの余白に書きなぐる。
企業としての理念だの計画だのというものは皆無、とにかく明日食べるための仕事をしながら、アイデアだけは無限だった。
本当にお金がなかった、自分の給料も出ない有様。
そんな時、新美さんに食事に連れて行ってもらったり仕事を紹介してもらったり。
紹介してもらった仕事の一つが雑誌の仕事で、それが学び業界との接点になり、今の自分の事業がある。
いくら感謝しても感謝しきれない人だった。
だからあの頃の仕事に出会うとあの人を思い出す。
形の残る仕事をするってやはりすごいことさんだと思う。
今回、いくつかの手型と握手をした。
金属の手型がとても暖かい。(その日の博多は35度越えの猛暑日!)
懐かしさで、グッと感情がこみ上げてくる。
振り返ってみると。
会社を辞めて、人生の転機を迎えた時、それまでのように全てがうまく行くとは限らない。
新しい旅立ちには様々な苦難もある、でも必ず救いがある。
大切なのは諦めないこと、そして生きている事を感謝する事。
一生懸命の人を見捨てることはない、と自分は思う。
あの時があるから、あの人に出会ったから今がある。
無駄なことなんて何もない。