差し歯が取れた。
取れてしまったものは仕方ない。
歯医者さんに行って治してもらわなければならない。
歯医者さん・・・。
自分にとって最大の苦手項目。
内科、耳鼻科、眼科など他の医者には苦手意識はない。
が、歯医者だけはだめ。
はっきり言って「怖い」のである。
歯医者=恐怖である。
子供の頃から歯が弱い。ちょっとした事ですぐに虫歯になる。
だから歯医者に行く、するとすぐに抜歯である。
乳歯なのでちょっとした虫歯でも抜歯の方が手っ取り早かったか?
大人になってからも歯の治療は恐怖。自分では見えない場所で「ガリガリ」と音を立てて削られる。
時に強烈な痛みの一撃を食らう事もある。
だから、今でも歯医者に行くというのは怖いのである。
歯の弱さについては過去に母親から詫びられた。
どうやら母親は牛乳が好きでなかったらしく、自分がお腹にいた頃に牛乳を飲まなかった。
それが原因で自分の歯は弱いと母親は思っているらしい。
今更母親を恨んでも仕方がない。
この運命を甘んじて受け入れよう。
それに今日は母の日だ、恨み節は口にするまい。
恐怖心を持っている人間にとって、歯医者選びは慎重だ。
今回もそう。
差し歯をなんとかしなければ会社には行けない。
自分にとっての歯医者とは、七年前まで住んでいた井荻駅近くの医院であった。
先生とは十年以上の付き合いだ。
こっち(豊玉)に越してからも、何かあれば電車で通っていた。
その先生は自分の歯医者恐怖症を知っていてくれる。
治療の時は丁寧に、そして優しく接してくれる。
先生に全てを任せていた。
しかし、今回は緊急事態だ。
連休の中日なので、なるべく早く会社に行かなければならない。
西武新宿線で井荻に行ってる時間はない。
そこで近所の、という話になる。
しかし、近所の歯医者さんには面識がない。
優しい先生が良い。女医さんだとちょっと気が引ける(この期に及んで・・・)
そこで、小児歯科をやっていて評判が良さそうな近場の医者を探す。
なんとか見つけて、予約の電話をする。
直ぐに来るように言われる。
初診の問診票を記入。
「その他伝えておきたい事」の欄に「歯医者さんが怖いです」と書くかを真剣に迷ったが、書かずに受付のお姉さんにこっそりと「実は・・・」と耳打ち。
すぐに診察台に案内されて先生登場。
「鈴木さん、どれくらい怖いですか?」と優しく話しかけてくれる。
そして不安解消の具体的方法を示してくれる。
ちょっと割腹の良い人の良さそうな先生。
診察台の前には子供たちの書いた絵と先生へのメッセージが飾ってある。
これって結構癒し効果あり。安心感が生まれる。
とても良い先生で、治療中も常に「痛くないですか?」と声をかけていただき、処置の方法をキチンと説明してもらえる。
この安心感が良い。不安の解消が恐怖心を和らげる。
そして気づいた。
自分にとって恐怖心を除いてくれる、ありがたい歯医者さんのポイント。
1 不安に思っている患者の目線に立ってくれる(具体的な解決方法も提示してくれた)
2 安心感が生まれる環境を作ってくれる。(子供達の絵がそうだったな!)
3 治療方法や方針についてきちんと説明してくれる(レントゲンを前に具体的にね)
今回出会えた先生に気づかされた3点ですっかりと安心でき、恐怖心は払拭できた。
という事で、次回の予約をする頃にはすっかりリラックス。
次が楽しみ!とは言えないが、もっとリラックスして通院する事ができそうだ。
先生には結構面倒な患者だったんではなかろうか?申し訳ない。
会社に向かう電車の中、気持ちに余裕ができて気づいた事がある。
もしかしたら、震災後の国民や被災者の不安解消も同じなんじゃないかなぁと。
リーダーが国民ときちんと向き合って話を聞き、進むべき方向を指し示してあげる。
それだけで随分と不安の解消になるはずなのにね。
世間では震災の対応について一国のリーダーのあり方が論じられている。
選挙で選ばれし“先生方”よりも、象徴とされている方々が国や国民のあるべき姿を示してくれている。
それはとてもありがたい事だと思う。
だが、“先生方”に対する憤りが全国民に広がっている事を、この国のリーダーは理解しているのであろうか?
国家の一大事には、国民の事を第一に考え、皆の不安を解消してくれる名医のようなリーダーが必要だなと思った。
たかが差し歯が取れた話から国家のリーダー論になってしまったが、結構通じることがあるなと思う今日この頃。
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