恒例の新人歓迎旅行が、弟が経営する箱根のペンション「コンフォート」で行なわれた。
初日のイベントは「ケイドロ」
簡単に言うと、泥棒組と警察組に別れて鬼ごっこ。
大の大人が鬼ごっこかいと思ったが、弟が企画してくれたのでやってみた。
今、大人が遊んでみたい昔の遊びのナンバー1がこれらしい。(弟情報だが)
大人22人が芦ノ湖近くの草っ原で鬼ごっこ。
茂みの中に隠れると中々みつからない。探す方は一苦労。
それでも、茂みを分け入ると一人二人と見つかる!
「あ、Hさん見つけた!」
見つかった方は必死に逃げる。
追いかける方も必死だ。
幾つになっても鬼ごっこは楽しい。
さて、自分も隠れる番になり茂みの奥に身を潜める。
茂みに入ると、どんなところに隠れれば良いか体が勝手に反応する。
太陽が西日だからここまで入ると見えないはず、この角度では鬼は気づかない・・・。
幼い日の思い出が土の香りと共に蘇ってくる・・・。
昭和40年代後半、東京下町。
空き地が点在し、薮や茂みもそこら中にあった。
その頃の遊びと言えば、草野球か「缶蹴り」。
「缶蹴り」は、鬼の子どもが缶を蹴られないように守りながら逃げる子どもたちを見つける鬼ごっこ。
遊びの舞台は近くの「稲荷神社」境内。
社務所が一つに資材置き場が一つ、周りは茂みに覆われ子どもの身長であればいくらでも隠れるところがある神社周辺は子ども達の格好の遊び場だった。
「エノ、みつけ!」
「なんだよ、見つかっちゃったよ」
鬼は見つけると缶の近くに捕虜(?)を連れていく。
カーン!!!
「やったー、ヤッサンが蹴った!」
「また、ヤッサンかよ、なんだよ!」
缶を蹴られると捕虜は解放される。
「みのちん、また鬼だぜ!100数えろよ!」
「ちぇ、1、2、3、・・・」
全員が見つかるまで鬼は続く、結構シュールな遊びだ。
やっと鬼から解放され、逃げる番になる。
始まりは、鬼が100数える。その間に隠れる。
境内外の茂みの奥、自分の背丈ほどある雑草の中に身を潜めれば、そう簡単には見つからない。
とりあえず落ち着き場所を見つけて、息を殺す。
「ここなら大丈夫、この前も見つからなかった」
しばらくすると小さな声で自分を呼ぶ声が聞こえる。
「みのちん、こっち」
声の方を見上げると、資材置き場の屋根にヤッサンがいる。
手招きするので、匍匐前進で近づく。
「あのさぁ、俺が合図したら一緒に缶蹴りにいこうぜ!」
一つ年上のヤッサンは運動神経抜群。
草野球でもいつもリーディングヒッターでエース。
皆の憧れの的。
そのヤッサンから一緒に缶を蹴りに行こうと誘われた。
一緒にヒーローになろうと言われたのだ。
「うん、行く」
断る理由なんてない。
資材置き場近くの茂みに隠れ場所を確保し、ジッとそのときを待つ。
「エノ、見つけ!」
「イサオくん、見つけ!」
仲間が捕まる声が聞こえる。
ヤッサンはまだ動かない。
ジッと鬼の動きを追っている。
「みのちん、いまだ!」
突然のヤッサンの声。
茂みから身を起こし、缶のある方向へ一目散。
ヤッサンも資材置き場の屋根から飛び降りて缶の方向へ走り出す。
走りながら横を見ると、鬼がこちらの動きに気づき、必死の形相で追いかけてくる。
「わぁー!」
思わず叫びながら、缶に向って走る。
ヤッサンよりも少し早く缶に到着した自分は、すぐ後ろで立ち止まったヤッサンの顔を見る。
「うん、やれ!」
ニッと笑ったヤッサンの目がそう言った。
しっかり見据えて空振りしないように思いっきり蹴り上げる。
カーン!!!
放物線を描きながら缶は青い空に放たれた。
「やったー!みのちん、サンキュー!」
友達を解放したヒーローが得意げに捨て台詞を吐く。
「また鬼だぜ!100数えな!」
土と草木の匂いが40年前の自分を連れてきてくれた。
子どものように無邪気に楽しめた「ケイドロ」は多少のかすり傷と共に終了した。
メンバーもそれぞれ楽しんでくれたようで大成功かな。
ちなみに、今回のイベントを企画してくれた我が愛しき弟君。
3歳違いの彼は当時5、6歳。
我々の遊び仲間とは年が離れていていつも「お豆ちゃん」扱い。
いつも遊びに入れてもらえない彼。
「お兄ちゃん、待ってよ!」
と、泣きながら遊びに行く自分の後を追ってた。
そんな彼も今ではすっかり頼もしい経営者。
そう言えば、お腹の出っ張りが「豆だぬき」のようだったなぁ。
愛しき「お豆ちゃん」、今回もいろいろとありがとうね!