札幌という街は大変魅力的な街である。
空気はパリッとしている、道路が広い、街が綺麗、食べ物が美味しい、物価が安い。
東京から出張で行く度に思うことである。
物価が安い、というところは首都圏にいるとピンとこないかもしれない。
賃貸物件で例えると分かりやすい。
メインステーションである地下鉄「大通駅」から5駅ほど、時間で言えば15〜20分、駅徒歩5分以内2LDKでいくらか?
東京、新宿からの同距離であれば「中野」「明大前」「代々木上原」あたりか?
東京で言えば築年にもよるが8〜10万円は下らないだろう。
札幌では5万円台で充分物件がある。
それくらい物価が安いのである。
そういう土地だから働く人の平均給与も首都圏よりは安い。
2、3割安くても生活できそうな気配は確かにある。
当社で働く2人の札幌スタッフは言う。
「それでも流通小売の給与では辛いです」
流通小売の給与の安さは全国的に有名ではあるが、物価の安い札幌でも厳しいらしい。
それくらいにその業界で働く人たちの給与は安くなってしまっている。
なぜか?
社員の給与というのは「売上」から「仕入(原価)」を引いた粗利益の中から支払われる。
粗利益の中から人件費を含む「販売管理費」(販管費)を引いたものが純利益である。
これはどんな業界でも一緒のはず。
ということは「粗利益(営業利益)」を確保しなければ社員の給与は出ない。
流通小売の業界というのは「価格競争」の世界だ。
消費者は少しでも安いお店で買おうとする、当然他店よりも安く売るお店にお客さんは来る。
しかし「商品の仕入額」はそんなに変わるものではない。
各店舗は「粗利益」を犠牲にして安売りをしてお客さんを呼ぶ。
そうしなければ「お店が潰れてしまう」からだ。
「粗利益」を減らしてお客さんを呼んだお店としては「販管費」に費やすお金はあまりない。
人件費は「販管費」の一部だから働いている人の給与は当然に低く抑えられてしまう。
安売り店で働く人の給与があまり上がらない仕組みがお分かり頂けると思う。
忙しい割に給与が安いとはなんとも気の毒な話である・・・。
思い出した!
昨今どこでも取り上げられる「保育士の給与問題」
「忙しくて大変な仕事の割に給与が安いからなんとかしなければならない!」
大変で重要な仕事の割に給与が安い職種として話題に上がる。
しかし保育士さんの給与が安い理由は、流通小売業界の給与の安さの仕組み以上に困った問題があるのだ。
前述したように社員の給与というのは「売上」から「仕入」を引いた額「粗利益」から「販管費」の一部として支給すると書いた。
では保育園特に話題の認可保育園の「売上」とは何であろうか?
預ける保護者からの「保育料」?
しかし保育料は世帯年収によって異なる。
ほぼ無料に近い世帯から月に8万円前後(これ変わってないと思うけど?)払う世帯まで。
そこに自治体からの「補助金」が入る、預かる子どもの年齢によって補助金の額は変わるけど、3歳児であれば20万円(保育料の補填として支給)。
それが認可保育園の「売上」
「税金」による売上がかなりの部分を占めるのが今の「認可保育園」経営。
「仕入」は大したことはない、リネン代とかおやつ代とか。
「販管費」は大変。
施設には規定がたくさんある、敷地面積やトイレの数。子どもの数が増えれば増やさなければならない敷地面積。
保育園で働くのは保育士さんだけじゃない、看護師さんや栄養士さん、規定で決まっている。
「仕入」の9割以上は人件費。
認可保育園の規定を満たす土地、建物を確保しながら人件費を出すなんて至難の技。
「販管費」だけで売上を超える金額いっちゃいます!
経営者として考えたらこんな事業でない!
普通にやったら「赤字企業」を大量生産する仕組みなんですわ!
それを「助成金」という名の「税金」で補填してギリギリの経営をしている。
そんな中、保育士に対して5万支給するとか1万5千円支給するとか言る政治家。
はっきり言ってそれ無駄金です、税金の無駄遣い。
元々おかしな話だよ、資本主義社会で働く人に国が直接給与を補填するなんて。
社会主義か?日本は。
社員の給与は会社の裁量で決めなくてはならない。
それがどんな職種であろうとも。
もしも保育士さんに補填するなら他の職種の人にも補填するべきでしょ?
それとも保育士さん以外は「不要な」職種であるとでも言うのですか?
だったら介護職の人だってもっともらって良いと思うよ。
結論。
保育事業の仕組み自体を変えなくちゃいけない。
「助成金」頼りの経営体制を変えるべき。
そのためには「認可保育園を減らす」
その代わりに無認可(自由裁量)保育園を増やす。
そして「助成金」は子育て家族に支給する。
年収に関係なく子どもの数に応じて「子育て支援金」として。
保育やシッターにのみ使えるクーポンを発行する。
それは保育園でもベビーシッターにでも使えるようにする。
そうして認可保育園には「本当に支援が必要な家庭」の子どもだけが入所する。
これって「特別養護老人ホーム」ですでにやってること。
国の負担も減るよ、必ず。
そして自由裁量化された「保育園」はサービス業として競争原理の中で経営活動を行う。
各社特色を出しながら。
高額所得者向けの「エグゼクティブサービス保育園」
野山を駆け回る「自然児育成保育園」
グローバル教育を中心にした「インターナショナル保育園」
保育料は自由にさせれば良い。
そこで働く保育士さんはその事業者にあったスキルを身につける必要がある。
そのスキル次第で給与が決まる。
国からの補填なんて必要ない。
保護者が喜んで保育料を払うから。
なんでやらないんだろうか?ヨーロッパではやってる。
やっぱり利権の問題?
保育園は小売ではない、原価が決まった商売をしているわけではない。
サービス業として質の高い仕事をすればそれを受けたい消費者は必ずいるのだ。
経済の基本をすれば良いだけなのに。
そのことを政治家は誰も言わない、それを言う政党があったら積極的に支援する。
政治は真剣にそのことを考えていない。
ついでにもう一つ。
同じ保育士さんでも高給取ってる方がいますよ。
公務員保育士さんは高給取りです。
たくさんの給料をもらってる。
民間とは全然違うよ。
100%税金で支給されている保育士さんの給料が市民の保育料と補助金で「経営」している保育園で働く保育士さんの給与がこんなに違うことを問題にした政治家さんはいますか?
昨今、同一労働同一賃金を導入しようと政府はしているらしいですが、まずは「保育士」さんの給与について考えていただきたい。
ずいぶん前から言ってるけど、保育の問題を政治家の宣伝文句にして欲しくない。
もっと根本的に考えて解決しなければいけない問題なのだ。
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