ここ1週間、ある「こと」が頭から離れない。
「弁証法と経営」
前回の経営者勉強会で山口義行名誉教授から頂いた話。
話のタイトルは『成功の中の失敗、失敗の中の成功 「弁証法」的思考のススメ』だ。
当ブログでも度々登場する弁証法だが、ここで復習をしておこう。
『ある事柄の中にその事柄の反対物(否定するような要素)を見て取る』という考え方を弁証法的思考法と呼ぶ。
対立的な関係に目を向けそのことから真理に近付こうとする考え方だそうだ。
自分でどんなに勉強しようが一生わからないだろうが、山口先生から解説してもらうとわかった気がする。
先生の話の内容はここでは書けないが(会員限定の記事になっているため!)一部をご紹介。
先生が大学で教える前に塾の先生をやっていたことがあったそうな。
その塾に中学2年生の生徒がいた、この子の成績表には2から上の数字はなかった。
その子を教えてしばらくしてからの定期テスト。
答案用紙を持って先生に駆け寄ってきた。
「先生!今回のテスト60点だったよ!」
嬉しそうに報告するその生徒に「なんだこの点数は!」と叱る。
生徒は唖然と先生を見る。
「なんで先生は叱るの?お母さんは褒めてくれたのに」
お母さんは「褒める」先生は「叱る」
同じ点数なのに全く逆のリアクションを取られた生徒は困惑したかもしれない。
お母さんの心境はこうだろう「この子は今まで30点以上の点数を取ったことがない、60点取れたのは素晴らしい!」
先生の心境はこうだ「この子は決してバカじゃない、試験対策もした80点以上は取れるはずだ、何をミスしたのだ?」
お母さんは60点以上を「期待」していないから「褒める」
先生は80点を「期待」したので「叱る」
果たしてどちらがこの生徒へのリアクションとして正しいのだろうか?
一見矛盾しているようだが、双方に「愛情」があることは間違いない。
憎らしくて褒めたり叱ったりすることはない。
同じ「愛情」があってもリアクションは逆になる、対立する関係が内包する。
これによって人間は成長すると言われている。
ちなみにこの生徒は中学3年生で卒業する頃には、成績表がオール5になったそうだ!
「褒めるだけでもダメ、叱るだけでもダメ」は弁証法的思考なのかな?
さて、先生の話は企業経営に進んでいく。
『伸びる会社、成長する会社というのは、社内に「矛盾」を抱えている会社だ!』
対立する思考や行動があるからこそ企業は成長するのである、というのが弁証法的会社経営。
これに「ピン!」ときてしまった。
通常、企業というのは「全員で同じ方向に向く」ことを良しとされてきた。
企業理念に共感して全員が同じベクトルを向いて仕事をすることが理想であると。
組織の人材育成には「ロールモデル」(模範・手本)が必要で皆でそれを目指すことが良しとされた。
それが怪しくなってきた、ということだ。
「ポジティブとネガティブを内包して組織を運営することを良しとする」
「同質」経営から「異端」を認めてそれによって成長を促進する。
言葉で言うのは簡単だが、難易度はかなり高い。
中小企業でオーナー経営であれば「俺が法律だ!」などと嘯く経営者も多い。
そんな経営者が「自分の言うことを聞かないメンバー」を受け入れられるだろうか?
つくづく「人間は合理的な生き物ではない」と思う。
理屈ではわかっているけど「心情的」に行動できない。
どうしても「お気に入り」で周囲を固めてしまう、自分に意見するメンバーを遠ざける、しかしこれでは組織の成長はない。
自社についてはどうか?
実は2015年から「マネジメント改革」を行なっている我がグループ。
「テトリスマネジメント」序編。(2015/2/15)http://paseli.typepad.jp/minolog/2015/02/page/2/
この方向性は弁証法的思考に近い気がしている。
これを実践することで業績は現在も好調を続けている、
今後も組織や人材で悩むであろうが、根底に「弁証法的思考」があると随分と楽になる。
それにしても、山口先生の今回の解説はどこかでオープンにした方が良いと思うなぁ。
いっその事、弁証法的思考の本を書かれてみてはいかがでしょう?
お待ちしております!
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