先週7日水曜日、BS11「中小企業ビジネスジャーナル」が放送された。
自分がキャスターを務める第2回目。
取材から関わるこの番組、キャスターをやる場合は制作から出演まで全てに関わらなければならない為、結構な労力と神経を使う。
視聴者目線で見ている人が楽しめるように、ゲストの方に失礼のないように。
キャスター経験が浅い自分には荷の重い仕事である。
今回は番組がで伝えたかった事があったので整理してみたい。
「新田信行の経営塾」と題して通常番組とは違う編成で行う番組。
若手経営者をゲストに迎えて第一勧業信用組合の新田理事長をはじめ、ご意見番が物申す企画。
前回7月の放送では2名の若手経営者を招き番組をお届けしたが、結果的に企業のPR番組のようになってしまった。
今回はそのような「ちょうちん」ではない番組を作りたいという思いがあった。
自分がキャスターをやる回は、いわゆる「台本」が無い。
ゲストへのフリやご意見番へのフリも基本的にアドリブである。
こちらの質問にどう答えるのかは現場その時の流れ次第だ。
結果としては前回よりも緊張感のあるライブ番組になったと思っている。
ゴルフのレッスンアプリを開発・販売している若手経営者。
思いが先行してなかなか経営が上手くいかなかった。
ビジネスモデルを変えないと自分が食べていけない。
銀行からの融資を求めて奔走するが融資をしてくれる銀行はない。
累積赤字もあり、単月黒字もできていない会社には金融機関は冷たい。
しかしここで救世主が出てくる、地場の信用組合である。
今回のご意見番(塾長)の金融機関は実績よりも経営者の人物重視でお金を貸してくれる。
藁にもすがる気持ちで第一勧業信用組合のドアを叩いた。
融資は成功、おまけに出資の約束まで。
おかげで会社は息を吹き返し、ビジネスモデルを転換し少しづつではあるが売上も安定してきた。
未だに単月の黒字にはなっていないが来年早々には単黒になりそうな流れらしい。
その前に資金繰りが厳しくなりそうなのでファンドで資本金を調達するらしい。
もう一人のゲスト、ミニアパレルメーカー。
こだわりの1着を作る事がコンセプト。
創業間も無いので問屋には相手にしてもらえず、小売店での販売ができない。
ネット販売に踏み切るが思うように売上は伸びない。
1年弱で経営危機。
そんな時にクラウドファンディングの経営者に出会い、その仕組みを使って商品開発資金を調達する。
同じタイミングで金融機関に融資を頼むが断られ続ける。
そんな中、第一勧業信用組合に出会う。
融資も出資も取り付ける。
クラウドファンディングは成功。
新たな商品は開発する前から販売が始まり、在庫リスクが少ない。
気を良くした社長はその後、毎月連続でクラウドファンディングで商品開発。
さらに資本もクラウドファンディングで集める。
250人以上の株主が発生した。
この会社も未だに単黒にはなっていない。
近日中に資本金を再度クラウドで集めるそうだ。
両社とも自社商品に対する思い入れは素晴らしいし、人柄も素敵である。
新田塾長は両社の経営手法をまとめて「共感経済」と語った。
解説すると。
今までの経営は、実績(累積の黒字化、単月黒字化、現金化できる資産の保有)がなければ金融機関とは取引ができずに資金繰りに窮すれば「倒産」して自己破産するしかなかった。
共感経済では、実績は問われず経営者の人間性や友達の多さで資金が供給され商品開発も資金繰りも心配する必要なし。
これからの経営は「共感者」をどれほど集められるのか?が肝になっていく。
確かにクラウドファンディングで商品開発のコストは吸収され、資金繰りが足りなくなれば”仲間”から資金を調達すれば良いのであればさもありなんである。
ネットの社会でこんな事が起こり始めていたのは知っていた。
それがリアルな経営の場、特に老舗の金融機関がそのような融資や出資を始めていることに驚きを感じてしまった。
若手経営者やこれからチャレンジしたいベンチャー志向の人達にとっては大変な朗報だと思う。
25年前、自分が起業した頃にはこんな考え方はなかった。
実績を積み上げて3年以上かけて始めて金融機関と取引ができるようになった、それも保証協会付きで。
そんな時代から比べれば格段の進歩である。
融資は返済しなければならないお金だが出資は返済無用のお金である。
失敗しても返済の義務はない。
「やったもん勝ち」なビジネス環境になりつつあると言える。
番組は概ねそんな論調で終了し、若手経営者に希望を与える?内容だったと思う。
しかし、自分はあえて言いたい。
資金繰りや商品開発のコストを他人任せにすることで、経営者の「モラル」が低下しないかと。
身銭を切る、という言葉がある。
中小企業の経営者とは身銭を切って社員に給料を払い商品開発をしてきた。
だからこそ、社員に思いを寄せ商品に惚れ込んで来た。
社員を大切にし、商品に思いを込めてきた。
良いものを作って社会の役に立とうと思ってやってきた。
共感経済の「金は天下の回りもの」的な発想で「ダメならまた次!」という発想が社員や商品をずさんに扱うことにはならないだろうか?
だからと言って、今までのように実績主義で新しいアイデアや能力ある人を潰してしまう事が良いとは思わない。
要はお金のしがらみから解放された経営者がしっかりとした「モラル」を持ち続ける事が大切という事だ。
他人のお金で偶然にビジネスがうまくいき事業をバイアウトして手に余る資金を有し「仲間」を増やして小金をばら撒き、さらなる「偶発的成功者」を産むことで自らの富を増やす人をカリスマ化している向きがある。
自分のような叩き上げ経営者から見るとなんとも危うい風潮のような気がするが、皆さんはどう思うだろう?
番組ではそこまで伝えられなかったが視聴者の気持ちに少しでも思いが伝わればありがたい。