先週、取材で初めてお会いしたT本さん。
女性経済キャスターとしてご活躍中。
お会いするまではちょっと怖い人かな、とイメージしていたが。
実際は気さくで話しやすい方で、思わず話しが盛り上がる。
とっても楽しく、いろいろと学べた取材であった。(取材した記事は近日公開予定!)
MBAフォルダーでもあり、FPなどの資格も所有する彼女曰く。
「私は生き方のビジョンを持っています、そのために資格(MBAやFT)を取得しました。資格は目的を達成する為の手段であり、資格を取る事が目的になったことはありません」
その通りだなぁ。
資格もスキルも自分の描く生き方を実践するための手段であって欲しい。
本当に大切なのはそれぞれの「どう生きるのか」という思い。
我々も大切にしているところは、そこ。
手段を目的にしないのは、企業でも同じはず。
ここに一件、味自慢のケーキ屋さんがあるとしよう。
小規模ながらも馴染みのお客さんに支えられて、人気のお店。
そこのお店のオーナー店長、ある日業界の会合で若手経営者の話を聞いた。
「やっぱり、お店は規模が大事、売上増やして多店舗経営すれば将来も安定ですよ!」
そんな話に影響を受けて、「よし、うちも売上増やすぞ!」
というわけで、年商5千万円のお店が来期1億円を目指す。
何年も同じような売上規模のお店がいきなり倍の売上をあげるのは並大抵の事ではない。
そこでオーナー店長、売上をのばす為に販路拡大を狙い、近所のスーパーの総菜売り場にケーキを置いてもらうように交渉。
無事交渉成立。ところが今のままでは生産能力が足りない。
急遽パートさんを雇い、今までは店長自ら作っていたケーキをパートさんにも作ってもらえるように製造工程を単純化。
今まで自分のお店に出していたような多種類のケーキを作れるはずもなく、ケーキの種類を限定。
スーパーでもお店でも同じケーキを出さざるを得ない。
販路を広げたかいもあり売上は順調に増え、なんとか1億円の大台にまで売上を伸ばす事が出来た。
しかし、翌年。
スーパーからは、自分のところよりも安くケーキを卸すお店が現れたと言われ取引停止。
自分の店では、以前に贔屓にしてくれていたお客さんが来店しなくなり、閑古鳥。
それでも雇っていたパートさんには給料を払わなければならない。仕方なくリストラ。
2年後、お店があった場所には「ForRent」の張り紙。
何がいけなかったのだろう?
1億円の売上を目指したのがいけなかった?
いやいや、売上の増加を目指したのがいけなかったわけではない。
このオーナーが「店を経営している目的」を見失ってしまったことなんだ。
「1億の売上だろ?それが目的じゃないか」と思われるかな?
はっきり言うと、経営とはよっぽどの事が無い限り「売上が目的になる」事はない。
よっぽどの事とは、お金を借りたり返したりもしくは上場を狙ったり。
要は、経営本来の目的とは違うところに狙いがある場合の事だ。
では、先ほどのケーキ屋さんの目的とは何だろう?
おそらく「おいしいケーキを喜んでくれる人達に、常に変わりなく届ける」であり、ケーキ職人としては「自分のケーキを食べて笑顔になる人を増やしたい」ではないか。
にも関わらず、目的を「売上を増やす」事にしてしまい、本来大切にするべき自身の「ドメイン」を捨ててしまった。
だから、「消滅」いや、お客さんから「抹殺」されてしまったのだと思う。
確かに企業として生き続けるためには成長する必要がある。
しかし、企業が成長するかどうかは、その企業が“生み出すもの”が社会に必要とされるか否かにかかっている。
社会が「お前の生み出すものは、世の中にもっと必要なんだ」と言えば、自ずと売上は伸びる。
だから企業は「自分は何ものか?何故我々は存在するのか?社会に何を与えているのか?」を徹底的に考える必要があるのだ。
誤解を恐れずに言えば、日本の大手有名企業“ソニー”や“パナソニック”なども、自分が何ものか?がわからなくなった結果が今の苦しい状況ではないのだろうか?
自分がもしも前出のケーキ屋オーナーであれば。
まずは自社の強み(顧客の求めるニーズ)を徹底的に調べて、それを越えるような商品(サービス)が提供できるまでじっくり体力をつける。
それがケーキの種類なのか、デリバリーサービス(近隣に限る)なのか、材料(オーガニック?)なのかはわからないが。
そういった企業としての基礎体力とドメインを明確にした上で、必要であれば指標として売上1億円を目指す。
決して売上目標が目的になるような事はしない。
経営とは、組織のあるべき姿(目的、ドメイン)を指し示し、共に働く仲間をそこに連れていく仕事であると思う。
その過程には辛い事も悩む事もあるであろう、しかし、少なくても売上増加や規模拡大を目的とし、誰かに追いつく事で自己満足する事が経営ではないと信じている。
冒頭のT本さんの言葉でもう一つ印象的な言葉があった。
「自分の目標を決めてからも辛い事はあるし、勉強する時間もない。それでもこうして続けられているのは、この先にある自分の姿を見たいから。誰かを目指して努力している訳ではないですよ(笑)」
なんとも「男前な女子(失礼!)」ではないか。
我々(自分?)も“男前”でありたい・・・。
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