営業の新入社員が入ってしばらくするとアポ取りが始まる。
「パセリの〇〇と申します!」と初々しい声で新規顧客の開拓だ。
最初は自信なしげにしているが、そのうち笑顔も出てくる。
三ヶ月もすれば一人前になっていく、早いものだ。
こういう光景を見ていて思ってしまうことがある。
「社名を名乗って相手に伝わるってすごいことだな」
独立したての頃、新しいお客さんを開拓するにも自社の名前を言ってもわかってもらえない。
当然だ、昨日今日できた会社のことなんて知るわけもない。
そうなると「〇〇というビジネスをやっている〇〇という会社の〇〇です」と説明を入れなければならない。
おかげさまで当社グループの「パセリ」「ドゥプランニング」「キャリアウィン」どれもそれぞれの業界の中では比較的知られている存在となった。
社歴も10年を超えて、それなりの「信頼」を得てきている。
この「信頼」というものは一朝一夕で得られるものではない。
創業から積み重ねてきた「実績」そして日々の「行動」
経営層の努力だけでは決して得られない歴代メンバーと現在のメンバー、日々の積み重ねの結果が信頼なのだ。
しかし積み重ねた信頼もあっという間に「失う」こともある。
昨今の日本のメジャー企業の失態。
東芝しかりシャープしかり。
多くの人の信頼を失ったことは残念極まりない。
これらは会計上の不正や失策によるものであり、経営層の大いなる失敗であろう。
ところがもっと小さなことで積み上げてきた「信頼」を失うことがある。
先日、札幌にて新規のお客さんに訪問した。
医療機関を経営し、立派な自社ビルをお持ちの企業である。
その自社ビルには関連施設や企業が入居している。
総合受付は8階なのでそちらに伺う。
通常、これだけのビルであれば「受付」的な表示があるはずだ。
何もない。
社名が扉に貼ってあるだけ。
仕方なくノックする、何の反応もない。
あれ?
仕方なく扉を開ける、中に受付がある。
(おいおい、こういう仕組みかよ)
内線電話がある、総務・受付の番号を押す。
「はい?」完全に不機嫌そうである。
「11時に〇〇さんとお約束いただいてます、パセリの鈴木です」
「〇〇はこちらにはおりませんが?本当に8階に来いと言われましたか?」
「はい、受付に来いとご指示をいただきましたが・・・」
「〇〇は7階におります、こちらにはいません!」
「では、7階に伺えばよろしいのですね?」
ガチャン!
この瞬間、自分は7階に寄らずに帰ろうと思った。
札幌オフィスのS君が一緒にいてくれたおかげで社会人としての理性が保てた。
7階に伺い「内線電話」にて担当者に連絡がつき、お会いする。
大変丁寧な方で親切に内部のご案内をいただき事業のご説明を頂いた。
担当の方のお話の所々で「当グループの理事長が申しますには」いう言葉があった。
確かに理事長さんの思いは高尚なのでしょう、素晴らしい施設でした。
しかし、この立派なビルを出た時に「こことは取引はしない!」と心に決めた。
同時に大通公園にほど近くでこの企業が経営している大きな医療機関について「信頼」できなくなった。
総合受付(今となっては本当にそうだったのかも疑問だが)で味わったなんとも「嫌な」感じがこの企業の印象として根付いてしまった。
人間なんてそんなもんだ。
最初に嫌な感じを味わってしまったらそれを払拭することは難しい。
ここの理事長さんがどれだけの歴史と努力で築いてきたであろう「信頼」はたった一度の受付の言葉と態度でボロボロに崩れた。
そして失った信頼は簡単には戻すことはできない。
社員教育に「営業マン教育」が重要と言われる、お客様と最初に出会うのが営業マンだからだ。
ところがお客様と最初に会うのは営業マンだけではないことに気づいていない企業は多い。
自社の受付から電話をしてくる人は「どうでも良い人」ではないのだ。
いつ何時「福の神」が受付に来るかもしれない。
それでも「不遜な態度」で応じるのであろうか?
そして、歴代のメンバーが築いてきた「信頼」を一瞬にして壊してしまう恐ろしさ。
自戒の念も含めて、再度考えるべきテーマなのかもしれない。
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