楽器を始めたのは高校生になった頃。
中学生の頃は運動系の部活をやっていたが男子校に入学したことで自分の限界に気づかされる。
練習がハード、体がでかい、みんなうまい、と三拍子。
「こりゃ新しい道を探さないと」
そんな時に同じクラスの数名が「音楽部」に入部すると聞き「それもありかな」という軽い気持ちで体験。
体験で見た光景は・・・。
初心者は自分だけ。
ギターもベースもキーボードもドラムも中学の頃に経験した人ばかり。
「おいおい、大丈夫か俺?」
しかも同じクラスで地味だった「K」のギターは格別。
そこにいた全ての部員が「無言」になる。
「こいつなんなんだ?」
とりあえずドラムの先輩に指導をしてもらう。
もちろんすぐに上手くなるわけもない、まわりに比べれば全くの下手くそだ。
親を拝み倒して「ドラム練習セット」を購入し自室にセット。
学校で練習したことを繰り返し練習した。
その頃の練習は、基本練習。
同じリズムの同じフレーズをひたすら叩く。
慣れてきたらメトロノームと同期させる。
「簡単そうだ」と思うかもしれない。
しかし、メトロノームというのは本当に忌々しい存在なのだ。
まぁ元々リズム感が良い方ではないからだろう、苦戦する。
あるフレーズで慣れてきたのでフレーズを変えてみると、これがまたメトロノームとずれる。
これの繰り返しである。
課題曲練習もある。
ギター、ベース、キーボードの全パートで合わせて曲を演奏する。
他の楽器は経験者ばかり、自分と組む人は大変だ。
リズムも不安定だしフレーズの展開もぎこちない。
「やばいな、足引っ張ってる」
危機感から自宅練習の時間も増えていく。
週末は家にこもって基礎練習。
そんな日々が数ヶ月続く。
秋の発表会のための合宿。
同級生の中で幾つかのバンドができていた。
気の合う人間同士の集まりや好きなアーティストが共通な人の集まり。
自分はといえば、贅沢を言ってる場合ではない。
とにかく誰かと組まなければ。
「俺たちとやるか?」
声をかけてきてくれたのはKだった。
「いいの?俺で」
「同じクラスのよしみだ、その代わり俺、厳しいよ」
「ありがとう」
もう一人同じクラスのSが本来はギターだがベースを担当してくれることになり3人でバンド結成。
演奏するのは「KISS」の「ストラッター」という曲。
ハードロックである。
正直に言うとそれまで「ハードロック」なるものに触れたことがなかった。
変わった化粧をするこのバンドの比較的激しい曲が自分にとって人生初の人前で初めて演奏する曲となった。
ボーカルはKが兼務。
3人の練習は地味なものだった。
まずはイントロとテーマ部分だけ繰り返して演奏。
サビ、ブリッジ、テーマ、サビそしてエンディング。
3人で何度も何度も。
ある程度できるようになると1曲を通しで練習する。同じ曲を何度も。
そのうち飽きてきてテンションも下がってくる。
それでもKは妥協しない。
「盛り上がっていくぜ!」とか言いながら我々を鼓舞しながら何度も練習する。
レパートリーは1曲しかないのだからそれだけを練習する。
今考えるとKもSも良くぞ付き合ってくれた。
彼らのテクニックでいえば、朝飯前の曲だろうに。
初心者の自分に合わせて練習に付き合ってくれたのだ。
無我夢中の文化祭は終わった。
同時に「みのる練習バンド」は解散。
この半年で自分の中に目覚めたものがある。
「基礎練習が大切」という感覚だ。
個人もグループも「基本練習」が大切なんだ。
飽きるまでの「基礎練習」が本当の力を作る。
その後自分は学校内で3つのバンドを掛け持つようになり3年生の頃には文化祭で野外ステージで演奏するようになる。
そうなれたのも「基礎練習」をその後も続けたからに違いない。
Kは高校在学中にプロデビュー。
現在「筋肉少女帯」で橘高文彦としてギターを担当している。
(筋肉少女帯「週替わりの奇跡の神話」作曲
MXTV「うしおととら」主題歌https://www.youtube.com/watch?v=3iC5uEYtlZM)
先週水曜日。
ここ毎年12月に余興的に演奏している我がバンドの練習があった。
「ちょっと練習開始が早すぎません?」
などとからかわれるが、実は「基礎練習」を始めているのだ。
ギター、ベース、ドラムの3パートだけが集まって8ビート、3連などをコードやスケールで練習。
さらに課題曲のイントロからテーマの部分だけを繰り返し練習。
それも「メトロノーム」とシンクロさせて。
何度も同じフレーズを演奏していると3人とメトロノームが完全シンクロする瞬間がある。
「あ、気持ちいい!」
この感覚を味わうのは高校のあの頃以来。
Kと一緒に演った始めてのバンドの時の感覚がよみがえる。
基本って本当に大切なんだよなぁ。
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