実は研修って嫌いなのだ。
新入社員時代、当時のRグループの研修というのは今では考えられないようなものばかり。
特に、今でも忘れられないROD(別名DP研修)と言われる研修。
ジュニア、シニア、マネジャー、組織それぞれパターンがあるのだが、ジュニア版(通称JDP)を新入社員は受ける、これがひどい!
本来の目的は「自らの弱みと強みを理解してビジネスマインドを高めること」だと思う。
プロのトレーナーがやれば素晴らしい研修になると思うが、当時は現場マネージャーが即席トレーナーになって行っていた。
良くなかったのは「自らの弱みに気づく」ことだけがクローズアップしてしまい、生意気な新入社員や売れない営業マンを徹底的に叩く場となってしまっていたこと。
一人当たりの時間は未設定、先輩も含めて5、6人のグループになって対象者を徹底的にこき下ろす。
本人が抵抗できなくなるまで言葉で叩きのめす、基本的に本人が泣くまでやる。
頑固者はなかなか泣かないので、数時間かかることもあり夜中までかかることもしばしば。
今これやったら「なんとかハラスメント」で訴えられるレベル。
研修をやったトレーナーは「学生時代の甘えた気分を払拭させてやった」と満足げ、「人として成長しただろう!」と受講者の満足を催促する始末。
自分はこれをやられて本当に悔しい思いをした、これがきっかけで退職した同僚も多くいる。
このDP研修は別格に辛かったが、基本的に研修という場は「詰められる」か「気合を入れられる」ことが多かった。
そのどれもが会社業績よりも人間教育と嘯く、「他社でも通用するような人材を作っているのだ!」などと悦に入っていたが単なる研修主催者の自己満足でしかない。
自分の会社ではそういう理不尽にしんどい研修はやりたくなかったのだが、ある一時期に「辛い思いをする研修」を行ってきた。
今はすっかり辞めてしまったが、後悔している部分でもある。
一般的に経営者というのは社員研修をやらないと不安になる生き物なのかもしれない。
社員に「ためになる」「前向きになれる」「現場で役に立つ」教育を受けさせようと思うのだ。
それが多少厳しいものであったとしても、その方が役に立つであろうと錯覚するのだ。
ここではっきりさせなければならないことがある。
企業内の教育研修というのは「自社事業の成長」が目的になっているはずである。
会社が経費を払って社員を教育するのであるから当然のことだ。
「個の能力開発」であるとか「人的資質の向上」などを目的にするものではない。
人間教育が目的というのは学校など教育機関の言葉だ。
昨今、採用を目的として「教育研修がウリ!」と銘打っている企業があるがどうだろうか?
確かに最近の学生は「教えられること」に慣れてしまっていて「研修」が好きらしいが、若干の違和感を感じる。
教育研修というのは、スポーツ選手の「筋トレ」に近いと自分は思っている。
イチローでも本田でも錦織でも自分のプレイのパフォーマンスを最大限に発揮するために「筋トレ」をはじめとするトレーニングをする。
彼らは「この筋トレが僕のウリです!」なんて言わない。
「筋トレ」は手段であって目的ではない。だから個人によってやり方も鍛える場所も違う。
結局「影の存在」なのである。
最近のスポーツクラブでは「パーソナルトレーニング」が人気だ。
本人の目的や特性に寄り添ってトレーニングを行う。
その目的がスポーツのパフォーマンスアップなのか、楽器の上達なのか。ダイエットなのかはそれぞれで良い。
教育研修も本当に成果を期待するのであればパーソナルトレーニング的な「OJT」が大切だと思う。
理念を伝えることがトップの役割、それを共感するための研修と現場OJTがセットで教育研修。
企業内教育研修の目的は個人の資質アップにあらず「事業成長と成功のため」それで良いと思う。
だから教育研修も筋トレと同じで「影の存在」なのである。
気をつけなければいけないのは「筋トレ」をサボるとパフォーマンスが落ちるだけでなく「怪我」もしやすくなる。
おろそかにするととんでもないしっぺ返しに会うかもしれないのは筋トレも教育研修も同じ。
筋トレも研修はやっぱり嫌いだけど、大切なことは十分にわかっているんだよね、ちゃんとジムも行かないとね!