これはアメリカのシアーズローバック社の1927年の通販カタログだ。
先日これを手にする機会があり、その扱いアイテムの多さに驚いた。
下着からコート、生活雑貨のあれこれ、あらゆるものが掲載されているカタログだった。
現在で言えば「アマゾン」、その雑誌版という感じだった。
1893年に創業した同社は、売れ残りの時計を買い取り通信販売で安く売ることから始まった。
広大な国土に多くの農民が生活していたアメリカは、交通手段が鉄道か馬車。
消費者は都市まで買い物に行くか、行商人から高い値段で商品を買うしかなかった。
そこに目をつけたシアーズ氏は、カタログを使った通信販売を始めた。
一括仕入れで安価に商品を提供するダイレクトマーケティング。
「満足しなければ返金いたします」という「うたい文句」が好評で、通販カタログは大変な人気だったらしい。
販売品目はどんどん増えていき、生活品はもちろん住宅まで販売した。
1900年代に始まったモータリゼーションの波に乗り車の販売にも乗り出し、生活に関するあらゆるものが同社の扱い品目になった。
19世紀から20世紀初頭のイノベーターとして活躍した同社であったが、先日「経営破綻」した。
原因は企業の巨大化に伴う組織の硬直化と言われているが、1番の原因は「アマゾン・ドット・コム」であろう。
かつてのイノベーターが新しい時代のイノベーターに駆逐される。
そんな構図が見えてしまう。
20世紀、通販ビジネスで成功を収めたシアーズ社は小売業に進出し、全米の都市に店舗展開した。
2000年代には経営破綻した「Kマート」も傘下に収め、店舗数はなおも膨らんだ。
1994年、シアーズ社設立の100年後、新時代のイノベーター「アマゾン」が登場し、マーケットを席巻した。
両社には大変に共通項が多い。
通販ビジネスであり生活に関するあらゆるものが揃い返金制度もある。
違うのは紙とネットだけである。
最近アマゾンは実店舗も少しづつではあるが始めている。
シアーズ社はなぜ破綻したのであろうか?
もし同社の幹部がアマゾンを脅威に感じて、手を打っていれば現在は違った結果になっていたかもしれない。
その機会は必ずあったはずだ。
現在700店舗ある同社の店舗を今後再生するらしい。
それらの店舗運営をアマゾンに任せて見たらどうなるだろう?
ちょっと興味ある。
アマゾンは全く新しいビジネスモデルを構築したわけではない、19世紀のシアーズの真似をしただけだ。
彼らはこれからどうするであろう?今後が楽しみである。
これは他人事ではない。
我々のような中小企業は油断すればすぐに市場を取られてしまう。
予断なき努力と思考が試されている。
我々はしかと肝に銘じるべき!
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